カモメ

2012.05.29(Tue) | EDIT

浪江の街の請戸の港 カモメの群れが飛んでいる
秋のコスモスが咲いて 子供たちがはしゃいでる
請戸の海から魚たちも 川を上ってしぶきをあげてる

浪江の街の立野の丘に 牛たちの群れが生きてる
立ち並ぶ朝の牛舎から 生き物の匂いがあふれてる
男たちは藁を運び 毎日牛たちの背中をさすってる

だけど全てが消えてしまった
全てが無くなってしまった
子供の声も消えちまった
漁師の声も消えちまった
農夫の声も消えちまった
牛たちの姿も何もかもが
やせ細った野良牛たちの 瞳をどうやって見ればいいの

僕が歩いてきた道は正しかったのか
したたり落ちてく命の 最後の最後の一滴を
コメカミに突きつけてみた 今一度問いかけてみた
僕たちが歩いてきた道は 本当に正しかったのか

浪江の街の駅前の ひしゃげたまんまの商店街
パン屋も床屋も雑貨屋も 命の音が聞こえない
全滅していた暮らしの中 壊れた信号機だけが点滅していた
僕はただ立ちつくし空を見上げて泣いた

男は牛たちの乳を泣きながら搾っている
来る日も来る日も毎日 泣きながら乳を搾っている
捨てては搾って搾っては捨てて泣いてる
男は牛舎でつぶやいた
 
「原発さえなければ」

秋のコスモス畑で も一度君たちと会いたい
秋のコスモス畑で も一度君たちと唄いたい
秋のコスモス畑で 君の背中を追いかけたい
請戸の海から昇る朝陽に も一度抱かれて泳ぎたい

生きたいと叫びながら 消えていった農夫たち
生きたいと叫びながら 消えていった漁師たち
行きたいと叫びながら 消えていったあの時の夕焼け

浪江の街の請戸の港 カモメの群れが飛んでいる
4本の煙突の向こう 何も知らずに飛んでいる
低く垂れ込めた真冬の空 ハラハラと白い雪が降ってた

止めてくれ 原発を
止めてくれ 今すぐ
母親から子供を引き裂き 子供から母親を裂く
乳房をくわえる赤子の 瞳をどうやって見つめればいいの

帰りたいなぁ
帰りたいなぁ
生まれた場所へ
帰りたいなぁ

カモメよ 飛んでくれ
カモメよ 空高く
高く高く高く高く高く飛んでくれ

母親から子供を引き裂き 子供から母親を裂く
乳房をくわえる赤子の 瞳をどうやって見つめればいいの


- Stay Aliveより 「カモメ」- 長渕剛




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